まっすぐにこちらを見た。視線はこの部屋の中では十分な意味を持って俺を射抜くため、俺も参考書から視線を上げる。こっちを指さして、
「ぶよぶよになったシュークリームみたい」
 だよね、安藤って。と、言った。確かに恐らくそのような言葉を、口にした。

「俺の知らない世界の食い物の話をするな」
「え、しらない? 割とぐろい」
「しらねーよ」
「美味しかったのにさ、可哀想」

 俺の目の前で大きな水槽に折りたたまって入りながら竹内は言う。溶け行く身体は何処まで貯められるのだろう。
 竹内の視線は既に俺にはなく、俺を指さした手もシャーペンを握り膝の上のノートの上を滑っていった。数学。

「あ。お前明日当たるぞ」
「え、まじで。どこ、どこが当たるの」
「教えてやんない」
「はあ? 安藤のくせに生意気でしょ!」

 僕くらいしか食べないんだからね、と、この異常な景色の中でけらけら笑う、笑うな。

(小林はぶよぶよのシュークリームに気付かないで食う、)







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