(うっすらアリスでちょっとアレ:トランプ)



 壊れたら直せば良い。そうして貴方の笑うのが、俺は大嫌いなのです。
「壊れても直して使えるところが、僕の唯一の利点だろう」
「唯一なんて、そんな」
 そんな。ことない、なんて、だけどきっと俺には貴方を納得させられるだけの言葉が無い。彼がもしも機械で無ければ、彼は、此処に無いのだから。
(例えば、お前、僕がこうでなけりゃ、百発百中の腕も、遠くまで利く耳も目も、持てやしなかったのだから)
(全て、全て、作られたもの、なのだから)
 だから、それが無ければという仮定は、彼の存在自体の否定なのである。そんなの、ごめんだ。俺は彼の全てを愛しんでやりたい。
 故に、彼が彼という無機物だからこそ美しいと言うことを、認めている。俺の恋している其れはただの機械だ。たった十代も前半の子供が、つまるところこの俺が、世界中よりもなによりも大切にしたいと思って居るのは、女王様のお遊び──と言うに死に物狂いすぎて気の退けるところだけれど──、の副産物に過ぎない古い玩具だという、こと。それは、認識しているの、です。

 最初に貴方を壊したのは誰でありましたでしょうか。俺は知りません。最初に俺の前で彼を壊したのは、あの糞ったれアリスでした。それ以前に君は、何回壊されたのですか。覚えていないと言われた時の、痛さを、君のその何でもない風な顔を、俺はどうにもできませんでした。

 直せば、良い。作り物なのだから。プログラミング次第でどうにでもなってしまう。テメェそれの意味を知って言っているのですか。
「幸い、まだ代わりは居ない……から」
 直して貰えるだけ有り難いじゃないか、と、言った。まるで人形のような人間だった。彼はその美しい姿で、きっと、きっと、生きていく。

(ジャック、壊れないで、壊れないで下さい)
(……何故?)
(俺が、ジャックを好きだから、)
(それこそ、何故)

 嗚呼、彼の人は届かない程遠く残酷で!




- mono space -